マンション長期修繕計画書の見直しが老朽化を防ぐ第一歩!

目次

※2022.04.01更新

修繕NEWS「マンションの老朽化によっておきる問題とその対策方法を考える」では、マンションの老朽化についての問題と解決策を解説しました。マンションの老朽化問題を解決するためには、建物の性能を維持する『修繕』と時代に合わせて機能を向上する『改修』を繰り返しながらより良い住環境にしていくことが大切です。そこで今回は、マンションをより良い状態で維持していく上で重要な『長期修繕計画』について解説していきます。

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マンションの『長期修繕計画』とは

マンションの資産価値維持・向上を図るためには、建物等の劣化に対して適時適切に修繕を行い、時代のニーズに合わせた改修も行うことが重要です。そのためには、事前に長期的な修繕や改修の計画を盛り込んだ「長期修繕計画書」を作成し、これに基づいて設定された修繕積立金を積み立てて運用していくことが必要です。

長期修繕計画書は、この先実施する大規模修繕工事(周期12年程度)が2回含まれる期間となるように作成・更新することが一般的です。国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」では、新築マンションで新しく作成する場合は30年分、既存マンションで見直す場合は30年以上かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上のの長期修繕計画書を作成することとなっています。

また同ガイドラインによると、5年おきに調査・診断を行い、その結果に基づいて長期修繕計画及び修繕積立金の見直しをすることが推奨されています。
 

『長期修繕計画』の基本構成

国土交通省が示す「長期修繕計画標準様式」では以下のようになっています。

<長期修繕計画標準様式の記載例>
様式第1号 マンションの建物・設備の概要等
様式第2号 調査・診断の概要
様式第3-1号 長期修繕計画の作成・修繕積立金の額の設定の考え方
様式第3-2号 推定修繕工事項目、修繕周期等の設定内容
様式第4-1号 長期修繕計画総括表
様式第4-2号 収支計画グラフ
様式第4-3号 長期修繕計画表(推定修繕工事項目(小項目)別、年度別)
様式第4-4号 推定修繕工事費内訳書
様式第5号 修繕積立金の額の設定

出典:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」
https://www.mlit.go.jp/common/001172730.pdf

長期修繕計画書の様式は作成者によって異なりますが、基本的な内容としては「建物・設備の工事計画」と「収支計画」についての長期的な計画を記載するものとなります。管理組合で直接長期修繕計画書を作成することは少なく、設計事務所や管理会社などから作成してもらう場合がほとんどですが、ガイドラインと照らし合わせて見ることで長期修繕計画書の内容に不足がないかを確認してみましょう。
 

建物・設備の工事計画

長期修繕計画表の作成

建物・設備に関する推定修繕工事項目や数量、単価等の項目は、新築マンションの場合は設計図書や工事請負契約による請負代金内訳書等に基づいて、既存マンションの場合は現状の長期修繕計画を踏まえ、保管されている設計図書、修繕等の履歴、現状の調査・診断の結果、専門工事業者の見積価格等に基づいて設定します。


▲仮設及び建物の推定工事項目の例(抜粋、加筆)
出典:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」
様式第4-3号 長期修繕計画表(推定修繕工事項目(小項目)別、年度別)
https://www.mlit.go.jp/common/001172730.pdf
 

大規模修繕工事と改修工事

大規模修繕工事は、屋上や外壁、バルコニー、廊下等のマンションの共用部をトータルで修繕するものです。主な工事内容は、以下の通りです。

 

長期修繕計画表を確認する上で、直接的な修繕費用ではないため見落としやすいのが「共通仮設工事」と「足場架設工事※1」です。「共通仮設工事」とは、現場事務所や資材置き場等を仮設する工事のことで、「足場架設工事」とは、建物の周囲に足場や養生シートを仮設する工事のことをいい、どちらも大規模修繕工事には欠かせない工事となります。長期修繕計画表にこういった仮設工事の費用も見込まれているかも確認が必要です。

※1国土交通省が公表している標準様式では「直接仮設」と表記されています。

 

また、長期的にマンションの資産価値を維持していくためには、劣化や不具合の起きた部分を「修繕」することに加えて、時代とともに変化を続ける住宅水準に見合うようにマンションの性能や機能をグレードアップする「改修」が必要です。標準様式では修繕に重きを置いているため改修項目は少なく見積もられていますが、長期修繕計画書の見直しでは、「修繕」の項目に加えて、必要に応じて建物・設備の性能や機能をグレードアップする「改修」の項目を適時追加していくことが求められます。アンケートで要望を募って長期修繕計画へ盛り込む等、必要な改修ができるよう見直しの際には改修計画の見直しも行いましょう。

「修繕」と「改修」の違いについては『マンションの老朽化によっておきる問題とその対策方法を考える』で解説しています。

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収支計画と修繕積立金

長期修繕計画書に基づく収支計画においては、推定修繕工事費の累計額を想定される修繕積立金の累計額が下回らないようにすることが大切です。また改修工事項目を設定する場合は、これに要する費用を含めた収支計画とする必要があります。

収支計画で指す修繕積立金は毎月各区分所有者から集金している修繕積立金のほかに、新築時に支払った修繕積立基金や、大規模修繕工事前にまとまったお金を集める一時金も含まれます。ただし、一時金の徴収に関しては集金ができないリスクが高く合意形成が困難なため、一時金を徴収しない計画にしておくことが望ましいです。管理組合は長期修繕計画をきちんと立て、計画的に修繕積立金を積み立てておくことが大切です。


▲収支計画グラフの例
出典:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」
様式第3-2号 推定修繕工事項目、修繕周期等の設定内容
https://www.mlit.go.jp/common/001172730.pdf

 

まとめ

修繕積立金不足の問題は多くの管理組合が抱える問題です。大規模修繕工事を実施しているからと安心するのではなく、次回以降も「計画的に」修繕等を実施できる資金計画を立てる必要があります。長期修繕計画の作成・見直しを行わないと適切な時期に大規模修繕工事を実施出来ず、マンションとしての資産価値や機能を損なってしまう「管理不全」に陥る場合もあるのです。専門家の意見を取り入れながら、それぞれのマンションに合った『長期修繕計画』を作成・見直しすることが重要です。

 

より詳しく『長期修繕計画』について知りたいマンション管理組合様・建物オーナー様は、オンラインセミナー動画『早めの見直しで資産価値を守る!事例で分かる長期修繕計画』をご覧ください。㈱ヨコソーの一級建築士として長期修繕計画の作成業務にも従事する“修繕のスペシャリスト”による解説がご覧いただけます。

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