注目トピック
マンションの「鉄部塗装工事」は何年ごと?|錆止め効果に適切なメンテナンス時期とは?
そこで今回は、実施する回数の多い「鉄部塗装工事」に着目し、その目的や実施時期の目安について解説していきます。
鉄部塗装工事の目的とは
鉄部塗装工事とは、文字通り鉄(鋼)製の箇所を塗装する工事です。鉄部塗装工事を実施する目的は、塗装の剥がれや欠けを塗り替える「美観の回復」はもちろん、なんといっても錆による劣化を防ぐ「錆止め」が最大の目的となります。
鉄(鋼)製の部材は通常本体を保護する塗装が施されていますが、経年劣化によって鉄部を保護している表面の塗装が剥がれ本体が露出すると、鉄分が空気や水分と反応して錆が発生します。
小さな錆であれば大きな問題となることはありませんが、適切なメンテナンスを行わないと錆が徐々に広がることで本体が腐食し、最悪の場合穴が開くなど交換が必要な状態へとつながる可能性があるのです。そうならないために、錆止め効果のある塗料で塗装したり、錆が発生した箇所の錆を除去した上で塗装し直して再発を防ぐといったメンテナンスをする必要があり、鉄部塗装工事は他の箇所よりも短いスパンで修繕を行うよう長期修繕計画では計画されています。
鉄部塗装工事の対象となる部位とは
鉄(鋼)製の部材はマンションのいたるところで使用されています。鉄部とはマンションの中でも以下の設備等が当てはまります。
・玄関の扉や枠
・エレベーターの扉や枠
・メーターボックスの扉や枠
・鉄製の手すり
・鉄製の非常階段
・防火扉
・消火栓ボックス
・駐輪場
・樋 等
鉄部の劣化は資産価値の低下につながる
美観が損なわれる
鉄部に塗装剥がれや退色、錆があると見栄えがよくありません。また、鉄部の錆びた箇所が雨に濡れて錆汁として他の場所に付着し、さらに美観を損なってしまうことも。そのような劣化が目立つことでマンション全体の印象も悪くなり、資産価値の低下にもつながります。
建具の機能が低下する
錆は進行すると体積が膨張する性質を持っているため、扉と枠が接する部分に錆が発生すると膨張した錆により建て付けが悪くなり、扉がスムーズに開かなくなる等の問題が発生します。扉と枠が接する箇所の劣化は利用者でないと気づきにくく、塗装が剥がれやすい箇所でもあるため注意が必要です。
錆を放置すると腐食が進み、破損・崩落等の危険がある
鉄部の腐食が進むと鉄は強度を失い脆くなり穴が開いたり崩落の危険があります。鉄骨階段や鉄製の手すりの錆が深刻化すると強度を失った手すりが折れる等の危険性があり、重大な事故につながりかねません。
鉄部の塗膜劣化の段階
鉄部の劣化には段階によって劣化度合いが異なります。
劣化度:低
艶がなくなる、色褪せてくる
劣化度:中
指で触った時に粉がつく「チョーキング※1」がみられる
※1チョーキングとは、雨や紫外線によって塗料の中の合成樹脂が分解され、色成分の顔料がチョークのように粉状になって現れる現象で、塗膜(=塗装の膜)の劣化が現れ始めたサインです。チョーキングを放置すると塗膜の劣化が進んでしまい、塗膜がひび割れたり錆が発生する原因となります。
劣化度:高
ひび割れ、塗膜の剥がれ
塗膜がひび割れや剥がれを起こすことで、鉄部が露出し空気や水と触れることで錆が発生します。
塗料メーカーでは、鉄部の塗膜劣化の段階と劣化が現れる年数の目安を以下のように示しています。
出典:エスケー化研HP「修繕周期の目安【鉄部】」
https://www.sk-kaken.co.jp/mansion/plans/iron/
鉄部塗装工事の実施時期の目安
鉄部塗装工事は、マンションの建物の中で最も修繕周期が短いメンテナンス項目です。マンションの立地条件や部位ごとの環境条件によって鉄部の劣化度合いや錆が発生するスピードは異なるため、以下はあくまでも目安となる鉄部塗装工事の実施時期となります。
国土交通省が定める修繕周期の目安
国土交通省が定める「長期修繕計画作成ガイドライン」では、各部位の修繕周期(参考)について、屋上防水や外壁塗装等を12年としているのに対し、鉄部塗装は雨掛かり(あまががり=雨が降ると濡れてしまう)部分で4年、非雨掛かり部分で6年とされています。
塗料メーカーが定める修繕周期の目安
塗料メーカーでは、鉄部塗装の周期を以下のように示しています。
出典:エスケー化研HP「修繕周期の目安【鉄部】」
https://www.sk-kaken.co.jp/mansion/plans/iron/
自分たちでチェックできる!鉄部の点検方法とは
チョーキングを一つの指標とする
塗装の目安としては、指で触った時に粉がつく「チョーキング」の現象が見られたら、鉄部塗装工事を検討してください。誰でも簡単にチェックできますので、鉄部塗装の実施時期の目安はチョーキングを一つの指標にすると良いでしょう。
錆の発生が見られる
錆の発生が見られるということは、塗膜の劣化が進行し鉄部が露出している証拠ですので劣化が進んでいる状態といえます。ただし、鉄部に錆が発生したから手遅れということはありません。錆をきれいに除去し、再発しないように錆止め処理を適切に行うことで鉄部の機能や強度を維持させることができます。錆が進行すると錆の除去費用や補修費用が高くなってしまいますので、早めの修繕がおすすめです。
そろそろ鉄部塗装工事の時期かな?と思ったら、理事会でマンション内を巡回してみる
実際にマンション管理組合や修繕委員会の理事になった際は、マンション内を巡回してみると良いでしょう。普段通らないフロアを通ったり開けたことのない扉を開けてみると、普段は気付かない劣化を見つけることができます。雨のあたる場所や直射日光があたる等の条件によって鉄部の劣化度合いや錆が発生するスピードは異なりますので、どの場所で鉄部の劣化が起きているのか管理組合や修繕委員会の理事の皆さんでチェックしてみると良いでしょう。
まとめ
一度発生した錆は何度も繰り返し発生する厄介な問題です。そのため鉄部塗装工事は、マンションのメンテンナンス項目の中で最も修繕周期が短くなっているのです。
鉄部の塗膜に劣化の症状が見られたら、いち早く錆の発生を防ぐために鉄部塗装工事を実施しましょう。もし錆が発生した場合でも、錆が膨らみ問題が大きくなる前に錆をしっかりと除去した上で塗り直して再発を防止するといったように、定期的に鉄部塗装工事のメンテナンスを行うことがマンションの資産価値維持へと繋げられる重要なポイントの一つです。
今回説明した鉄部塗装工事の実施時期はあくまでも目安となり、マンションの立地環境により劣化度合いは大きく異なるため、各々のマンションの劣化状況を見て適切な長期修繕計画書の見直しを行い、鉄部塗装工事の実施時期を判断する必要があります。株式会社ヨコソーでは随時ご相談を受け付けておりますので、もし鉄部塗装をご検討されている場合や、劣化が気になってきたなどご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください
ご相談はこちら