マンションの共用部分とは?改修のポイントや「専用使用権」についてご紹介

目次

マンションで暮らしていると専有部分・共用部分という言葉を耳にすることがあります。「共用部分とは、廊下やエントランスのことかな」と漠然と理解しているものの、正確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。例えば、「玄関ドアやベランダは共用部分です」と言われたら、「そんなはずはない」「他人がベランダに入ってきては困る」と感じませんか。今回の「修繕成功Magazine」では、共用部分と専有部分の仕分けに関する基礎知識、そして、共用部分に設定される「専用使用権」という権利について説明します。

マンションの「専有部分」と「共用部分」

2 共用部分の範囲 出典:横浜市マンション管理組合基礎セミナー.webp
出典:横浜市マンション管理組合基礎セミナー

マンションには「専有部分」と「共用部分」があり、その区分はマンションの管理規約に示されています。簡単に言うと、専有部分は自分だけが使える空間で、共有部分は居住者全員が利用する空間や付属物という仕分けです。

詳しく見ていきましょう。

専有部分とは

各住戸の内部、つまり、玄関ドアから内側の居室内が専有部分です。区分所有法では「区分所有権の目的たる建物の部分(第2条第3項)」と定義されています。

天井と床、壁は、躯体(マンション建物本体)を除く住戸の内部

玄関ドアは、内部塗装と錠

水道の配管や排水管、ガス管、電気配線など建物全体に関わる設備のうち住戸に引き込んだ部分

専有部分は区分所有者自ら管理し、点検や修繕を行います。

共用部分とは

専有ではない部分が共用部分です。区分所有法では「専有部分以外の建物の部分、専有部分に属さない建物の附属物(第2条第4項)、数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分(第4条第1項)」と定義されます。

冒頭で述べた玄関ドアやベランダのほか、窓枠と窓ガラスも共用部分です。各住戸に接してはいても、建物全体の機能・安全性、防犯、景観形成に直結しているため、管理・点検・修繕の責任は管理組合にあります。


建物の専有部分と共用部分の区分

以下は原則として共用部分に区分されます。マンション建物の維持に不可欠な機能であり、区分所有者全員の財産です。

▽エントランスホール、廊下、階段、エレベーターホール、エレベーター室、共用トイレ、屋上、屋根、塔屋、ポンプ室、自家用電気室、機械室、受水槽室、高置水槽室、パイプスペース、メーターボックス(給湯器ボイラー等の設備を除く)、内外壁、界壁、床スラブ、床、天井、柱、基礎部分、バルコニー等専有部分に属さない「建物の部分」

▽エレベーター設備、電気設備、給水設備、排水設備、消防・防災設備、インターネット通信設備、テレビ共同受信設備、オートロック設備、宅配ボックス、避雷設備、集合郵便受箱、各種の配線配管

出典:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン

● コラム  「共用」と「共有」の違いとは? ●


共用」と似た言葉に「共有」があります。

 

共用(きょうよう) 用途上、複数人が使う部分。マンションでは、区分所有法に基づき建物の一定部分が共用部分とされます。

共有(きょうゆう) 数人で所有権を分け合うこと。土地や建物の持ち分を法的に共同所有している場合です。  

 

マンションの廊下やエレベーターは共用部分なので全員が使う権利はありますが、直接の所有権を個々に持っているわけではないのです。
字や音が似ていて混同しがちですが、法的な意味は異なるのでここで整理しておきましょう。

ヨコソー君.png

共用部分の「専用使用権」とは ― 居住者が専用で使う権利

駐車場イメージ

ベランダやバルコニー、駐車場などは共用部分ですが、特定の住戸に使用が認められています。これが「専用使用権」という権利を設定する仕組みです。使用者が限定され他人が勝手に使うことはありませんが、管理や修繕は管理組合が責任を持つことになります。

代表的なものは次の通りです。

専用庭:1階住戸の前にある庭

ベランダ

ルーフバルコニー:上階の住戸にのみ接している広いバルコニー

玄関扉

駐車場、駐輪場

自分のもののように使っているけれど、実は共用部分と理解しておきましょう。

※バルコニー等の管理のうち、通常の使用に伴うものについては「専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない(国土交通省 マンション標準管理規約 第21条(敷地及び共用部分等の管理)」と定められており、日常の清掃や窓ガラスを割ってしまった時の入れ替えなどは各戸の居住者が行います。

使用料が必要な場合

専用使用権が設定されると、専用庭やベランダ、バルコニーは共用部分である以上、面積により対価が定められます。管理規約に基づいて発生する「使用料」です。駐車場・駐輪場ついては各住戸に1区画割り当てているマンションや、希望者のみ使用料を支払って利用するマンションがあります。いずれも料金や使用方法、維持管理のルールは管理規約に示されています。

使用上の制限

専用使用権が設定されている専用庭やベランダは、どのような使い方をしても自由なのでしょうか。
答えは「いいえ」です。
ほとんどのマンションでは原則として洗濯物を干す、軽度のガーデニング、テーブルや椅子を置く、人工芝を張るなど「一定のルールのもと、日常的かつ常識的な範囲での使用」が許容されるとしています。その場合でも緊急時の避難経路や排水溝をふさがないよう注意する必要があります。専用使用権があっても自由に使える私的な空間ではありません。

明確に禁止されることが多いのは、喫煙や大型の物置の設置などです。

■ 喫煙  
喫煙自体は個人の嗜好ですが、煙や臭いが風に乗って上階や隣室へ流れ込み、共用部分を通じて他人の生活に影響を及ぼします。受動喫煙による健康被害が懸念される昨今では、加熱式であってもマンション敷地内やベランダでの喫煙を〝迷惑行為〟とみなす管理組合が増えています。

■ 大型の物置やサンルームなどの設置  
災害発生時に避難経路をふさがないよう、規約でベランダ内に設置できる物置やサンルームの大きさを制限することがあります。

■ 子どものプール遊び 
小さなビニールプールの設置も、騒音・水はね・避難経路の妨げなどの観点から禁止する場合があります。水が溢れて階下に漏れる恐れもあります。

マンションによっては「手すりより高い位置に洗濯物を干さないこと」「布団干し禁止」「土の使用を禁止する」などと定めているところがあります。特に高層階から洗濯物やふとんが落下すると大変危険です。事故を避ける安全上の配慮であり、住宅街の良好な景観を守るためのルールでもあります。土の使用は、階下への落下や排水管の詰まりが懸念されるほか、小型の植木鉢の範囲を超える大量の土を用いたガーデニングは、避難の際に障害となる恐れがあります。
ベランダや専用庭を使用する際は、① 管理規約や細則に使用方法の制限が明記されていないか ②上下・隣接住戸への影響がないか(騒音・臭気・水漏れなど)③ 防災設備(パーテーション・避難はしご)の前をふさいでいないか―などを確認するようにしましょう。 

関連記事:127

共用部分を改修したい ― 規約に基づいた手続きを

専用庭

専用使用権が設定された共用部分を改修したいときはどうすればよいのでしょうか。
共用部分はマンション建物の維持に不可欠な機能であり、マンション全体の美観や防犯性能といった資産価値に直結する区分所有者全員の財産なので、原則、個人が自由に手を加えることはできません。では、計画修繕による一斉改良が困難な場合、個別に「断熱性の高いドアに交換したい」「防犯対策として窓ガラスを強化したい」「ベランダに人工芝を張りたい」といった機能を向上させる改修も制限されるのでしょうか。

ドアを交換したい

「ドアを著しく破損させてしまった」「枠がゆがみ、開け閉めに苦労するようになった」など、緊急に対応が必要な合理的な理由がある場合は、理事会の承認に基づきドアを交換することができます。管理規約細則に定められた施工方法や材質・形状の範囲内で、美観や防犯・防音性能が低下しないよう注意して進めることが必要です。費用は区分所有者が負担します。

一方、防犯や防音、断熱など住宅性能を向上させる改修は「管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施する」ものです。しかし、管理組合が速やかに実施できない場合もあり、そのような時は、「あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けることにより、当該工事を当該区分所有者の責任と負担において実施する」ことを細則で定めることが可能です(マンション標準管理規約 第22条(窓ガラス等の改良))。


サッシを交換したい

ドアだけでなく窓(サッシ)を交換したいときはどうでしょう。サッシの交換周期は30~45年を目安とし、3回目の大規模修繕工事以降に一斉に交換するのが一般的です。足場が必要だったり費用が高額だったりするため、まずは大規模修繕工事の改修項目や長期修繕計画に含まれていないか、確認してみることをお勧めします。

改修の予定がない、または計画が何年も先である場合は、管理組合に計画修繕を提案することになります。

なぜ改修したいのか

改修によるメリット

工事にかかる概算費用

工事期間

などを分かりやすくまとめ、自ら修繕委員に立候補してみてはいかがでしょう。他の居住者の賛同を得て改修工事を実施できれば、資産価値の向上に一役買うことになります。「健康住宅」や「省エネ」「子育て支援」など国や自治体の施策に沿った改修は、タイミングにより各種支援制度の補助金を利用して負担を軽減できることがあります。計画を提案する際は、施工会社に相談したり自治体のホームページで支援制度を調べたりすることをお勧めします。


内窓を設置したい、ガラスを交換したい

今ある窓の室内側への内窓の取り付けは、専有部分の工事となるため個別に実施できます。ガラスの交換も、「計画修繕によりただちに開口部の改良を行うことが困難な場合には、専有部分の修繕等における手続と同様の手続により、各区分所有者の責任と負担において工事を行うことができる」と改正されています(マンション標準管理規約 第22条(窓ガラス等の改良))。修繕・模様替えと同じく仕様や工法の制限などを確認した上で工事を行う旨を理事長に申請し、書面による承認を受けて実施します(マンション標準管理規約 第17条(専有部分の修繕等))。

関連記事:140関連記事:147



ベランダに人工芝を張りたい


リビングのように整えたルーフバルコニー

ベランダやバルコニーに人工芝を張る、木製デッキを敷くなどの軽微な改修は可能です。管理規約で使用制限を確認し、必要に応じて管理組合に届け出または申請を行ってから実施しましょう。ベランダは避難経路でもあるため、避難や排水の妨げにならないことが大前提です。
物干し金具の設置など軽微な改修は規約に「申請不要」とされていることが多いのですが、工事の騒音によるトラブルを回避するため、管理組合に報告してから実施すると安心です。
繰り返しになりますが、玄関ドアや窓、ベランダはマンション全体の美観や防犯性能といった資産価値に直結するため、専用で使用する部分であっても自由に改修することはできません。管理規約に基づいた手続きと合意形成が必要です。まずは管理組合に相談し、マンションの長期修繕計画を確認しましょう。近く大規模修繕工事が予定されているのであれば、その機会に改修を要望することが近道です。

まとめ

ベランダやバルコニーは、自分の空間のようでありながら他の住民と共有している重要な共用部分です。管理規約を確認し、共同生活の一員として節度をもって利用することが求められます。改修したい場合や疑問がある場合は、事前に管理会社や理事会へ相談しましょう。「共用部分を気持ちよく使う」という視点が、マンション全体の住み心地と資産価値の向上につながります。

感想をお聞かせください
新たな発見やヒントを得ることは
できましたか?

おすすめ記事

お問い合わせ・資料請求はこちら

0800-888-6191

平日(土日祝を除く)
9:00-17:00