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マンションの区分所有者にはどんな義務があるの?占有者との違いや専用使用権について解説
今回はマンションの区分所有者とは何か、区分所有者にはどのような義務があるのかなどについて詳しく解説します。
区分所有者とは
区分所有者とは、建物に構造上区分された一部(専有部分)について所有する権利を持っている者をいいます。つまり、分譲マンションでいえば101号室を購入して所有している人は101号室の“区分所有者”ということになります。
区分所有者の義務
それでは、区分所有者にはどのような義務があるのか具体的にみていきましょう。
国土交通省が公表しているマンション標準管理規約(単棟型)では主に次の5つについて定められています。
1.管理規約及び総会の決議を守らなければならない
区分所有者は、円滑に共同生活を維持するために管理規約や総会の決議を遵守することが義務付けられています。
管理規約とは、共同生活を維持していくために必要なマンションごとの基本的なルールのようなもので、共用部分や専有部分の範囲、理事会の権限、管理組合の運営などについて定められています。総会は通常年に1回、大規模修繕工事実施時期の検討や管理規約の変更など、マンションの重要事項に関する意志決定が決議という形で行われます。
なお、区分所有者が家族や同居人と一緒に住んでいる場合は、同居する者に対しても管理規約や総会の決議を守らせる義務があります。
2.管理組合に加入しなければならない
区分所有者は、組合員として管理組合に加入することが義務付けられています。管理組合は区分所有者全員で構成され、主に建物の日常的な管理や、長期修繕計画に基づいた大規模修繕工事の管理(監理)及びそれらに関わるお金(管理費・修繕積立金)の管理を行います。また、実際に管理や工事を行うにあたって集めている管理費や修繕積立金が不足していないか、節約できるかどうかなどの見直しも行います。
「管理組合」について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
3.共用部分はそれぞれ決められた使い方で使用しなければならない
区分所有者は、それぞれの使い方に従って共用部分を使用することが義務付けられています。
具体的な内容は使用細則(マンションごとの実態に合わせて作成された共同生活をする上での細かいルール)によってマンションごとに定められています。例えば「共用廊下は通行のために使用するものであり、私物を置くために使用してはいけません」「駐輪場以外の場所に自転車を置いてはいけません」というように、共用部分のそれぞれに使い方が定められています。
特に、マンションの大規模修繕工事ではバルコニーの片付けや自転車の移動をしなくてはいけないケースが多くありますが、その場合も管理規約で定められていない場所に勝手に移動することはできませんので注意が必要です。使用細則はマンションによって異なりますので、お住まいのマンションの使用細則を確認してみると良いでしょう。
4.専有部分の修繕やリフォーム等を行う際は管理組合に承認を得なければならない
区分所有者は、専有部分について修繕やリフォーム等を行うときは、あらかじめ管理組合の理事長にその旨を申請し、書面または電磁的方法による承認を受けなければなりません。この時、共用部分や他の住戸に影響を与えるおそれがないかなどを確認するために、設計図・仕様書・工程表を添付した申請書を理事長に提出する必要があります。
理事長の承認を得ることで、例えばキッチンやトイレといった水回りのリフォームに伴う配管の取付け・取替え工事など、リフォームを行う上で必要な共用部分の工事を承認の範囲内において行うことができます。
5.管理費及び修繕積立金を管理組合に支払わなければならない
区分所有者は、マンション共用部分の維持・管理に必要な経費として、管理費や修繕積立金を管理組合に納入する義務があります。
管理費は日常管理にかかる費用や設備の定期点検、管理業務を管理会社に委託している場合はその支払いなどに、修繕積立金は長期修繕計画に基づいた大規模修繕工事や設備工事などに使用されます。
「管理費」について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
「修繕積立金」について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
区分所有者と「占有者」の違い
マンションの管理規約を読むと、区分所有者のほかに「占有者」という言葉も多く出てくるのではないでしょうか。「占有者」とは、実際そこに居住(使用)している人のことを指します。区分所有者が自身の所有物件に住んでいる場合には所有者・占有者ともに区分所有者ということになりますが、区分所有者が賃貸物件として第三者に貸し出している場合の占有者は賃借人となります。
この場合、占有者である賃借人は区分所有者ではないので管理規約等を守らなくても良いと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、それは間違いです。確かに管理規約によって管理規約等を守るよう義務付けられているのは区分所有者ですが、占有者もマンションで共同生活をする一員としてルールを守らなくてはなりません。マンション標準管理規約では、区分所有者は専有部分を第三者に貸し出す場合に、占有者である賃借人に対しても管理規約及び使用細則に定める事項を遵守させなければならないと定められていますので注意が必要です。
区分所有者が有する“専用使用権”とは
区分所有者は専有部分の所有者であると説明してきましたが、共用部分の所有者は誰なのでしょうか。マンション標準管理規約では、共用部分の所有者は区分所有者全員で構成される”管理組合”であり、管理組合が責任を持って共用部分を管理していくことが定められています。
ここで注意したいのが『専用使用が認められた共用部分』です。
共用廊下やエントランス、エレベーター、集会室など、区分所有者が共用で使用する場所は共用部分とイメージしやすいですが、実はバルコニー(ベランダ)なども共用部分に分類されます。バルコニーには避難はしごや避難ハッチ、パーテーション(隔て板)などが設置されており、緊急時の避難経路となっているため共用部分として管理組合が管理をしています。
しかし、共用部分だからと勝手にバルコニーにお隣さんが入ってきたり、物を置かれたら困ってしまいますよね。そのためにあるのが“専用使用権”です。専用使用権とは、共用部分の特定の場所を特定の区分所有者が使用できる権利のことで、区分所有者はバルコニーやルーフバルコニー、専用庭のほか、区画ごとで使用者が定められている駐車場や駐輪場などの共用部分についても専用使用権が認められています。
マンション共用部分・専有部分の範囲について詳しくはこちらの記事で解説しています。
まとめ
今回はマンションの”区分所有者”について詳しく解説してきました。マンションで安全・安心・快適に共同生活を維持していくためには、マンションごとに決められたルールを守る必要があります。
また、区分所有者はご自身が所有されている専有部分だけでなく共有部分の資産価値という面にも目を向けることが大切です。マンションを売却する予定がなくても、資産価値を維持・向上させるということは、安全・安心・快適に暮らせる環境づくりにもつながります。せっかく気に入ったマンションを購入して区分所有者となるのであれば、「住み続けたい」と思える環境づくりに取り組んでいくことも大切ではないでしょうか。