マンション管理費の相場とは?賢く費用を抑えるポイントについて解説

目次

「マンション管理費」とは、分譲マンションの共用部分を日常的に維持・管理し、備品や通信、管理組合運営その他に充てる費用です。今回の修繕成功magazineでは近年の管理費の相場を踏まえ、管理組合が管理業務を外部に委託している場合に費用を抑える工夫や実践例をご紹介します。

マンション管理費とは?

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管理状態の良し悪しはマンションの資産価値に直結します。なぜなら管理費には共用部分の日常的な維持・管理をはじめ管理組合で加入する保険料、備品や通信にかかる費用、公租公課、管理組合運営に充てられる費用が含まれ、これらが当然に充足することで、マンションが良い状態で維持されるからです。管理状態の良いマンションでは居住者の満足度が高まり、住まいやコミュニティーを大切にしようという気持ちが生まれ、大切にされた建物は長持ちするという好循環ができます。マンション選びのポイントは「マンションは管理を買え」と言われるゆえんです。

マンション管理費の相場について

とはいえ、マンション管理費は高ければ高いほどサービスが充実しているというわけではありません。管理組合には、管理会社が管理委託契約に基づいた日常管理業務を行っているか、居住者が時間外対応など過剰な業務を要求していないか、など、現状をしっかり把握し、管理費が妥当か判断することが求められます。管理会社と業務委託契約を更新する際は必ず重要事項説明が行われるので、そのタイミングで相場を確認し、必要な見直しを重ねましょう。

では、マンション管理費はどのくらいが相場なのでしょうか。

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管理費の目安 上・平均管理費/月/戸当たり、下・平均管理費/月/平方㍍当たり いずれも使用料・専用使用料からの充当額を除く 出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」より抜粋

これは建物の規模や設備、管理形態によって異なります。国土交通省が発表した「令和5年度マンション総合調査結果報告書」によると、1戸あたりの管理費の月額平均は11,503円でした(駐車場使用料などからの充当額を除く)。総戸数20戸以下の小規模マンションは、大規模マンションと比較してスケールメリットが働かないため割高になる傾向があります。都心部の高級マンションやタワーマンションなど共用施設が充実しているマンションは、住戸数が多くても高額になります。

専有面積1平方㍍当たりの平均価格は158.6円です。ご自宅の専有面積が80平方㍍の場合は「158.6円×80平方㍍=12,688円」と計算できるので比較してみましょう。

不動産情報誌やインターネットの住宅情報サイトには、売り出し中のマンションの概要とともに管理費の額が記載されているので、近隣にある同じくらいの規模で同じくらいの築年数のマンションを検索してみるのも参考になります。

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マンション管理費見直しのポイント

マンション管理費を見直す際は、次の点に注目してみると課題に気付きやすくなります。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001750163.pdf
国土交通省「令和5年度マンション総合調査

1)管理会社への委託費が高額でないか

国土交通省の「令和5年度マンション総合調査結果報告書」や近傍の同規模程度のマンション管理費を調べ、比較してみましょう。

2)不要なサービスや契約が含まれていないか

一般的な管理員業務は、次の四つに整理されます。

 ① 受付等業務 訪問者や居住者の応接・電話の応対、管理組合が定める各種届出の受理、宅配物の預かり・引渡し、管理用備品・鍵の管理など
 ② 点検業務 建物・諸設備の外観目視点検・記録、照明・管球類等の点検・交換、不審者や不審物・無断駐車等の確認など
 ③ 立会業務 保守・営繕等外注業務の着手・実施の立会い、ゴミ搬出や清掃業務の立会い、災害・事故等処理の立会いなど
 ④ 報告連絡業務 管理組合の文書の配付・掲示、各種届出・点検結果・立会結果等の報告、災害・事故等発生時の連絡・報告、居住者間のトラブルやクレーム発生時の報告など

理事会の場で管理委託契約書を読み合わせ、上記の委託内容を確認しましょう。理事は居住者の代表です。専門用語が用いられて分かりにくい部分があれば、居住者に代わって説明を求めてください。理解・納得した上で委託/更新を判断する責任があります。

高いと感じた場合

管理費が高いと感じるマンションは、その要因として先に述べたように総戸数が少ないことやコストのかかる設備の存在、管理会社への委託費用が割高であることなどが考えられます。

管理費の内訳を見てみましょう。人件費の割合や監視カメラの設置台数適切でしょうか。屋上庭園や子ども用屋外プールなど、使われなくなった設備はないでしょうか。生活スタイルの変化を踏まえ、設備や共用施設の在り方を見直してみることをお勧めします。

安いと感じた場合

一方で管理費が安いと感じるマンションも存在します。しかし、過度に安い場合は必要な管理業務が簡略化されていることがあるので注意が必要です。例えばゴミ集積場の衛生管理が不十分だったり、ロビーや廊下など共用部分の照明が切れたままだったり、掲示板のお知らせが古くなっても更新されていないケースなどです。また、消防設備やエレベーターの法定点検を実施していなかった例もあります。このようなマンションでは居住者の生活満足度が低下し、建物を大切に使おうという気持ちが薄れてしまいます。それだけでなく外部に「管理不全マンション」の印象を与え、空き巣狙いの侵入者に隙をみせることにもなります。

管理費は〝安いほど良い〟というものでもないことを念頭に、現在の管理状態や共用施設の在り方 を見直してみましょう。

マンション管理費を抑える工夫と実践例

見直しの結果、管理費が相場より高いと思われる場合にどのような工夫が可能でしょうか。

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管理会社への委託費が高額な場合

まず、今の管理会社と意見交換の場を持ちましょう。業務範囲の見直しによる費用削減の余地がないか、改善策の提案が可能か、率直に交渉するのです。その結果、管理組合と管理会社双方の要求が折り合えば良いのですが、そうでない場合は他の複数の管理会社へ見積もりを依頼し、比較検討することになります。

見積もりを依頼する際は条件や書式を統一し、各社の比較が容易にできるよう準備します。現在抱えている課題があれば解決策の提案も求め、その会社が対応できるか見極めましょう。

現在の管理会社との関係性には配慮が必要です。〝変更ありき〟ではなく、いま一度、他社と同一条件で見積もりを依頼してみることで、改めて費用の削減案や改善案が示されるかもしれません。

1)不要なサービスや契約が含まれていないか

住民アンケートを実施し、必要なサービスと不要なサービスを明確化しましょう。不要なサービスとは無計画な工事の発注や過剰な植栽の維持管理費などが挙げられます。災害時の食料・飲料水などの備蓄は管理組合任せではなく、区分所有者が各自で三日分のストックを管理するよう自助努力を促しましょう。

2)人件費の見直し

管理員の勤務形態も見直しの一つです。フルタイム勤務から短時間勤務に変更できるでしょうか。週5日勤務を3日に減らせるでしょうか。管理員や警備員が不在の日は監視カメラを稼働し、巡回回数を減らすことも選択肢です。

3)自主管理に切り替え

管理業務の一部を、居住者が当番制で受け持つ自主管理に切り替えた管理組合もあります 。日常の清掃や植栽の手入れ、ゴミ収集日の搬出作業などを輪番で行い、管理費の負担を軽減し大規模修繕工事に備えることが目的です。自主管理マンションの理事の一人は「当番制に切り替えた結果、居住者同士の交流が盛んになり、コミュニティーが活性化した」と話します。ただし、自主管理に切り替える場合、理事会が健全に機能していることが前提となります。

4)ランニングコストの確認

設備費に関しては、ダウングレードや縮小だけでなくランニングコストの削減が可能か検討してみましょう。共用部分の照明は、更新時にLEDへ交換することが推奨されます。AEDや監視カメラはリース契約の場合と買い取りの場合でどちらがより合理的か、複数社にシミュレーションを依頼して判断材料を収集しましょう。機械式立体駐車場の空き区画が増えすぎた場合は、除却して平置き式に転換し、メンテナンスコストを削減することも可能です。

 

見直しを検討する際、理事会は居住者に向けた事前説明会やアンケート調査を行い、できるだけ多くの意見を聞き、公平で透明性のある手順を踏むように努めましょう。「なぜ見直しを行うのか」「何が課題なのか」を詳しく伝えることで、変更する際の総会決議がスムーズになります。不要なものを中止・廃止することで委託費をどのくらい削減できるか数字で示すことも居住者からの理解を得るためのポイントです。居住者の合意形成ができていれば、現在の管理会社や見積もり参加会社に選考過程を説明するのも納得を得やすいでしょう。

委託業務内容の変更、または管理会社の変更は契約締結行為なので、総会での普通決議(過半数の賛成)が必要です。変更する場合は、現在の管理会社に遅くても3カ月 前までに書面で解約を申し入れます。(マンション管理委託契約書(契約の更新)第二十一条

 

管理費見直しの際の注意点

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中立の立場で公平に

管理費を見直す際は事前準備が重要です。まず居住者にアンケート調査を行うなどして管理に関する不満や要望を把握 しましょう。よく課題に挙がる「管理員の良し悪し」は、好き嫌いや相性にも左右されます。一部の人は不満に思っていてもその他の人は満足しているといったことがあるため、公平な視点での見極めが求められます。「近くにスーパーがあるからマンション内のコンビニは不要」などの意見があっても、外出が困難な人には日常的に不可欠な施設かもしれません。「フィットネス施設があるから購入を決めた」という人にとって施設の廃止は論外です。単に多数決で判断することは避け、議論を尽くして決議したいもの。居住者の声を広く聴いた上 で必要なサービスと不要なサービスを明確化し、中立の立場で議論を深めましょう。

検討の過程は「理事会からのお知らせ」などで賛成意見と反対意見の両方を公表し、少数意見も省略せず記載します 。将来の大規模修繕を視野に入れ、価格だけではなく管理の質を考えることで、お住まいのマンションに適した管理形態/管理会社が見えてきます。

まとめ

コスト削減を優先するあまり、住みやすさや快適さが損なわれては本末転倒です。不要なものを中止・廃止することで委託費をどのくらい削減できるか数字で示し、自主管理に切り替える場合は理事会が健全に機能していることが前提です。住民へのアンケートなど事前準備を念入りに行った上で、公平な検討を心がけましょう。

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