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大規模修繕で固定資産税が減税される?!「マンション長寿命化促進税制」とは
今回は、「マンション長寿命化促進税制」とは何か、管理組合様にとってどのようなメリットがあるのか、固定資産税の減額を受けるために必要な条件などについて詳しく解説します。
高経年マンションを取り巻く背景
築年数の経過とともに、「建物」と「人」という2つの高齢化は管理組合様にとって避けられない問題です。
多くのマンションでは、高齢化や工事費の値上がりなどによって大規模修繕工事に必要な資金である修繕積立金が不足している現状があります。実際に「区分所有者の高齢化が進み、修繕積立金の引き上げが難しい」、「そろそろ大規模修繕工事を実施しないといけないのに合意形成がなかなか進まない」などのお悩みを持つ管理組合様も多いのではないでしょうか。
大規模修繕工事が適切に行われていないと、外壁タイルの剥落など居住者だけでなく歩行者や近隣住民にも危険を及ぼすリスクが高まります。また、大規模修繕工事が行われず居住環境の維持ができなくなると、徐々に居住者がいなくなりさらに管理が行き届かなくなる悪循環に。2020年には全国初の分譲マンションの行政代執行が行われ、1億円を超える解体費用が所有者へ請求された事例もあり、本来資産となるはずのマンションも管理が行き届かなくなれば大きな負債となり得るのです。
「マンション長寿命化促進税制」とは
「マンション長寿命化促進税制」とは、一定の要件を満たすマンションにおいて長寿命化に資する大規模修繕工事*を実施した場合に、区分所有者様に課される翌年度の建物部分の固定資産税を減額する特例措置です。
*屋根防水工事、床防水工事及び外壁塗装等工事
令和5年度税制改正の大綱に盛り込まれ、2023年4月より必要な積立金の確保やマンションの長寿命化工事の実施に向けた管理組合の合意形成を支援することを目的として「マンション長寿命化促進税制」が新たにスタートします。
「マンション長寿命化促進税制」を活用することで、区分所有者様に課される翌年度の固定資産税が減額されるメリットが受けられるため、これまで難しいとされてきた管理組合の合意形成が円滑に進みやすくなります。
対象となるマンションの条件
固定資産税減額の特例措置を受けることのできる対象マンションは以下の通りです。
●築後20年以上が経過している10戸以上のマンションであること
●長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施していること
●長寿命化工事の実施に必要な積立金を確保していること
※マンション管理計画認定制度で認定を受けている、または、地方公共団体の助言・指導を受けて適切に長期修繕計画の見直し等をしていること
<2023年6月26日追記>
※管理計画認定を工事完了日の翌年1月1日までに取得する必要があります
※2020年9月以降に修繕積立金の見直しを行い管理計画認定基準未満の金額から認定基準以上に引き上げた場合が対象となります(管理計画の認定基準については国土交通省公式リーフレットをご確認ください)
「マンション管理計画認定制度」とは、マンションの管理計画が作成されており、その内容が適切であると認められたマンションのみ受けることができる認定です。認定を実施するエリアにあるマンションは申請することで「適切に管理されているマンション」として自治体からお墨付きをもらうことができ、資産価値向上などのメリットを受けることができます。
詳しくはこちらの記事で解説していますので宜しければご覧ください。
対象となる工事
対象工事は、2023年4月1日から2025年3月31日までの2年間に完了した長寿命化工事(屋根防水工事、床防水工事及び外壁塗装等工事)となります。
なお、先述した対象となるマンションの条件にもある通り、「長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施していること」が必要です。そのため1回目の大規模修繕工事は対象外、2回目以降の大規模修繕工事が特例措置の対象となるため注意が必要です。
実際の減税額はどのくらい?
実際にどの程度の固定資産税が減額されるかについてはお住まいの自治体の条例で定められますが、区分所有者様に課される工事翌年度の固定資産税(建物部分100㎡分まで)が基本的には1/3(参酌基準)の割合で減額されます。自治体によっては1/6~1/2の割合で減額されるため、毎年必ず納めなければならない固定資産税が減額されるというのは区分所有者様にとって大きなメリットになるのではないでしょうか。
申請手続きと留意事項について
固定資産税の減額を受けるためには、工事完了後3か月以内に自治体に申請する必要があります。区分所有者様は、マンション管理士などが発行した「長寿命化に資する大規模修繕工事であることの証明書」などを添付した上で申請を行います。
大規模修繕工事を行えば自動的に固定資産税の減額が受けられるわけではなく、減税を受けるためには区分所有者様にて申請する必要があるため注意しましょう。
また、管理計画認定についても工事完了日の翌年1月1日までに取得する必要があります(※工事完了日が1月1日の場合は、同年1月1日)。修繕積立金について管理計画認定基準未満だったものを、2020年9月以降に認定基準以上に引き上げて管理計画認定を取得することが条件となっています。もともと修繕積立金の金額が適正で、管理計画認定を既に取得済みのマンションは対象外となるため注意が必要です。
詳しい情報は随時「マンション管理・再生ポータルサイト」(国土交通省)に掲載されますのでご確認ください。
まとめ
今回は、『マンション長寿命化促進税制』について詳しく解説しました。「適切に管理されているマンション」として自治体に認められたマンションにおいて大規模修繕工事を行うことで、必ず納付しないといけない固定資産税が減額になるというのは区分所有者様にとって大きなメリットではないでしょうか。
この特例措置が活用できるのは「2023年4月1日〜2025年3月31日まで」の2年間に大規模修繕工事が完了した場合のみ。期間限定の特例措置となるため、大規模修繕工事を検討している管理組合様はぜひお早めに活用することをおすすめします。
まずは自身のマンションが減税の対象となる条件を満たしているか確認してみてはいかがでしょうか。
大規模修繕工事に関するご相談はもちろん、工事に関する特例措置や補助金・助成金に関するご相談についてもヨコソーまでお気軽にお問い合わせください。