注目トピック
マンションの修繕積立金とは?相場や適正な修繕積立金の見直し
今回は修繕積立金とは何か、費用相場や用途などについて詳しく解説します。
修繕積立金とは?管理費との違い
修繕積立金とは、マンションの共用部分を対象とした大規模修繕工事などの金額の大きい修繕を行うための積立金をいいます。区分所有者から毎月決まった額を徴収し、管理は管理組合で行うのが一般的です。
修繕積立金はマンションごとに作成する長期修繕計画に基づいて金額が設定されています。国土交通省が定める『長期修繕計画作成ガイドライン』では30年以上かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上の長期修繕計画を作成することが推奨され、その期間に予定される推定の修繕工事費を、月々の金額に均すことで修繕積立金の金額が決定します。
長期修繕計画についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
一方で、区分所有者が毎月支払わなくてはいけない費用にはもう一つ、「管理費」があります。その違いはその用途や目的にあり、管理費はマンションの日常的な清掃や共用設備の保守点検・メンテナンスなど、日常的な維持・管理の目的で使われます。
管理費について詳しくはこちらの記事で解説しています。
修繕積立金の相場
それでは、修繕積立金の平均相場はどのくらいなのでしょうか。国土交通省が発表した『平成30年度マンション総合調査結果』によると、駐車場などの使用料・専用使用料からの充当額を含む修繕積立金の平均相場は一戸あたり月額12,268円となっています(リンク先168ページ参照)。
また、国土交通省の『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』では、収集された事例をもとに専有面積(m²)あたりの修繕積立金の平均額の目安も紹介されていますのでこちらも参考にしてください(リンク先資料8ページ参照)。
計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安(機械式駐車場分を除く)
地上階数 / 建築延床面積 | 月額の専有面積当たりの修繕積立金額 | ||
事例の3分の2が 包含される幅 |
平均値 | ||
【20階未満】 | 5,000m²未満 | 235〜430円/m²・月 | 335円/m²・月 |
5,000m²以上〜10,000m²未満 | 170〜320円/m²・月 | 252円/m²・月 | |
10,000m²以上〜20,000m²未満 | 200〜330円/m²・月 | 271円/m²・月 | |
20,000m²以上 | 190〜325円/m²・月 | 255円/m²・月 | |
【20階以上】 | 240〜410円/m²・月 | 338円/m²・月 |
例えば、地上10階建、延べ床面積4,500m²のマンションの場合、 一戸あたりの専有面積が70m²のときの修繕積立金は335(円/m²・月)×70(m²)=23,450円/月と計算することができます。
マンションの形状や規模、立地条件、共用施設の有無などにより修繕積立金の額は異なりますので、平均相場を知るためのあくまで目安の一つとしてください。
さらに、大規模修繕工事は十数年に一度の周期で実施する必要があり、築年数が経過するごとに修繕箇所も増えていくため修繕積立金は値上がりしていく傾向にあります。修繕積立金の不足に陥らないよう、定期的に長期修繕計画を見直し適切な積立額に見直すことが大切です。
修繕積立金が不足した場合の対応方法についてはこちらの記事をご覧ください。
修繕積立金の使われ方
修繕積立金は具体的にどのようなことに使われるのでしょうか。国土交通省が定める『マンション標準管理規約(単棟型)』では次の5項目が定められています。
(1)定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
修繕積立金の主な使い道は大規模修繕工事をはじめとする計画修繕です。大規模修繕工事では、建物外周に足場を組み立て、屋上やベランダなどマンションの共用部分を対象に防水工事や外壁補修、塗装工事などの修繕が行われます。
ほかにも給排水設備やエレベーター、立体駐車場など、長期修繕計画に含まれている修繕を行う際は修繕積立金が使われます。
大規模修繕工事について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2)不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
計画的な修繕の費用以外にも、台風や大雨による漏水や地震によるひび割れや破損など、突発的に必要となった修繕についても修繕積立金が使われます。管理組合で加入している共用部分の火災保険や地震保険ではカバーできない場合や、保険適用をしない方が費用を抑えられる場合もあるため、自然災害や不測の事故にも備えて修繕積立金を積み立てておくと安心でしょう。
管理組合で考えておきたい建物損傷に備える防災についてはこちらの記事をご覧ください。
(3)敷地及び共用部分等の変更
マンションでは劣化や不具合の起きた箇所を“修繕”するだけでなく、時代とともに変化する住宅水準や居住者のニーズに対応するために性能をグレードアップする“改良”や“改修”を行うケースがあります。例えばバリアフリー化のためのスロープ設置や、セキュリティー強化のためのオートロック設置、集合ポストの交換など、これらの改良・改修工事の費用も修繕積立金から支出されます。
(4)建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査
建替えのための合意形成に必要な調査費用などの経費も修繕積立金の取崩しが可能です。ただし、修繕積立金は解体費用や建築費用などの建替え費用には充当できません。修繕積立金はあくまでも“修繕”のために区分所有者全員で積み立てたお金であり、実際に建替えなどで管理組合が解散となった場合は各区分所有者の持分割合に応じて返金されるケースが多いようです。
マンション建て替えの流れについてはこちらの記事をご覧ください。
(5)その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
上記(1)〜(4)に該当しないものでも、区分所有者全体の利益につながる管理のための費用であれば充当できるケースもあります。
まとめ
修繕積立金は毎月の支出であることや金額としても家計への影響も大きく、マンションに住み続ける限り支払うと思うと大きな出費ですが、マンションの資産価値を守るためは非常に重要です。
マンションの経年劣化・老朽化は避けることができない問題ですが、計画性を持って修繕・改修を行うことで、安全性を守るのみでなくマンションの資産価値を維持・向上させることができます。長期修繕計画作成ガイドラインでは、5年おきに長期修繕計画及び修繕積立金を見直すことが望ましいとされていますので、いざという時に資金不足にならないよう定期的に修繕積立金を見直し、適正額を積み立てておくことが大切です。
株式会社ヨコソーでは、大規模修繕工事に関するご不明点をできる限り解消し、より多くの管理組合様や建物オーナー様にとって有益な情報を発信してまいります。大規模修繕工事や建物調査診断、専有部分のリフォーム、給排水設備工事など、お気軽にご相談ください。